「おお、久しぶり! だけど、まさか本当に来てくれるなんて思わなかったぜ。

でもお客から電話があったって聞いた時、絶対におまえのことだろうなって思ったけどな」

「……"おまえ"じゃないんだけど……」

口をひらくと軽薄さがにじみ出てくるようで、しゃべらなきゃいいのにと感じた。

「ああ、悪い。で、名前なんていうの?」

「……言わなきゃダメなわけ?」

「名前教えてくれないと、なんて呼んでいいかわからないしな。それとも、おまえでいいんなら、そう呼ぶけど?」

言って、唇の片端だけを吊り上げて、笑って見せたその顔が、たまらなく憎たらしくも思えた。

「……理沙……理科の理に、さんずいの沙」

「理沙か、いい名前じゃん。じゃあ、改めてよろしく。俺は、知っての通り、銀河だから」

と、銀河が右手を差し出す。

ふいの紳士的な振る舞いに、少し驚きながらも、握手を交わした。