学園長はしぶい顔をして私と廣太郎を見比べ、ひとつ咳払いをした。

「まぁ良い。お前の判断は現在まで間違っておらん。目に入れても痛くない孫のお前の事だ、まずはやってみるが良かろう。ただ、会社に損害が出ない程度に、な」

「ありがとうございます。お祖父様に認めていただいて嬉しい限りです。それでは」

「時間厳守じゃな。儂も会議に向かうとしよう」


学園長が退席するまで廣太郎は深々と頭を下げていた。もちろん私も。
これが一日一つ従う約束に該当するだろうから。
学園長が去るとにっと笑って廣太郎が顔を上げた。
公約終了のサインのようで、張りつめた空気が嘘のように緩んだ。

「飲み込みが早くて大変助かるよ、百香」

「いちいち鼻につく言い方せずに素直にありがとうとか言えないの?」

「百香が素直にどういたしましてとでも言えそうならそうしている」

カチンときたけど確かに今礼を述べられても気持ち悪いとしか思えない。
こいつ私に好かれる気があるのかしら…疑問符ばかりが浮かんでいる私。