「顔が赤いな。保健室に行こう」

「なっ…あんたがあんなことするからでしょ!」

「廣太郎って呼べって言ったろ?」

「だからなによ!」

「約束が守れない子にはお仕置きがいるだろ」

「なっ…」

平手を一発お見舞いしようと手を振り上げだところで、周りの空気に気付く。
皆ぽかんとこちらを凝視している。
頭に上った血の気が引いて行く音まで聞こえそう…

「今度は青くなったな」

「なにすんのよ!」

廣太郎はよりにもよって私を横抱きにしてしまう。
初めてのことに逃げ出したいのに上手くいかない。

「もう一人の身体じゃないんだ。言うことを聞け」

「そんな誤解を招くような台詞言わないでよ!」

「誤解じゃない。真実だ。婚約者殿」

教室が一気にざわつく。
私の今までの苦労が水の泡…
悲しくなって言葉に詰まった私を、廣太郎は教室から連れ去った。