ぼんやりと外を眺める。
私の席は窓際の最後尾。
本来勉強したければ最前列を希望出来るわけなのだけど、学校では目立ちたくない。
度の入っていないレンズ越しに見る空は、現実のそれじゃないみたい。
あー…これが嘘ならどんなにいいだろう…

「…!」

昨日の柏原のこと。
何が良くて私?
こんなに地味に隠れて過ごす私の何が良いんだか。

「…な…きっ…!」

放課後の私ならまだしもと思うけど…まさか同一人物とは思わないだろうし?
ん…分からん。
なんだってあんなヤツの婚約者なんかに…

「宇奈月!」

「え…?あ、」

ふと顔を黒板側に向けると、担任がイライラした様子でこちらを見ていた。
自然と周りの視線も集まっている。

ヤバい。悪目立ちした。

「すみません」

素直に謝って回答する。
教科書の内容は予習で頭に入れている。
そつなく目立たなく。
そのやり方は崩さない。