~天へ送る風~



 リリアは絹のハンカチでこぼれる涙を拭こうとしたが、すでにそれは湿り気を帯びていた。


「ねえ、十六までに熱愛関係にならないと、その先、一生ひとりで暮らすの?」


 言いながら全く信じてはいなかったアレキサンドラだが、リリアはきゅ、と口角を結び、


「その通りです」
 重々しく言った。


「別にボクそれでもいいけれどな。どうせこれまでもそうだったんだし」


「なぜ、そんな悲しいことをいうの? 母がいるではありませんか。これまでも、ずっとおまえのことを案じ、教養とマナーを躾けて」


「はっ、そ、そうだったのか。はっきりいって、拷問に限りなく近い時間を過ごしてきたけど、そういうことだったんだ」


「母の言いたいことがわかりましたね。わたくしは、おまえに『恋』を知って、女の子らしくなってもらいたかったのよ」