~天へ送る風~



「冷血動物……そうか!」


 そして王子は合点がいった、と言うようにポンと手を打つ。


「泉の大蛇も今は冬眠中で……楽に水をくませてくれるかも」


 と、甘いことを言う。
「そうだといいですね、王子」


 アレキサンドラの対応はことさらに冷たい。

 王子が先ほどの無礼を謝らないからだ。

 ところが温泉は毒々しいまでの紫色に濁っており、周囲に光るものありと感じていたら、それは刀身が紫の剣が泉のほとりにつき立っているのだった。

 泉の周囲に草木は生えていないし花も咲かない。

 ただひとつ、純白の清廉な花が洞穴のわきにじきにつぼみを開かんと揺れていた。