~天へ送る風~



「大丈夫だ。だから死ぬな。私は君をおいてはどこへも行けない。この手を引くのは、君だったはずじゃないか……!」


「王子……前が見えません」


「私だ、私がここにいる」


「そうではなく……前、が……」


 ざらりとした感触が頬をかすめた。

 アレキサンドラは自分が反転するのを感じた。

 もう何も見えない代わりに何ものにも頼らない、すがらない。

 裏切らない、裏切られない。もう、十分だ。十分だと思える。

 見えない? 見なくて良い。亡者さえ光さす道を求めるのに彼女にはなにもなかった。絶望すら『見え』なかった。