私は彼方の言葉なんて耳に入らずに、だだ、桜井さんを見てた。

綺麗な人だな…。やっぱり彼方も私みたいな子供より、大人の女性がいいのかな…。

「…ぉぃ…ぉい…おい」


「あっはい。」

「何回呼んだらいいんだよ。」

「あっ。ごめん。ぼーっとしてた。」


「しっかりしろよ。もう帰っていいぞ。」

「えっ。血液検査は?」

彼方は一瞬驚き、ため息をついた。

「右腕見てみろよ。」


「えっ。いつの間に…。」


「じゃあな。」


私は大嫌いな注射が気付かないうちに終わっていたことに気を取られ桜井さんのことをすっかり忘れていた。