「おうい、こっちだこっちー」 「がんばってー、二人ともー」 「ああ、ありがとう。だれひとり顧みなかったのに、助けてくれて。ありがとう、ございます」 助けられた男は大粒の涙を流した。 すかさずクリスチーネはちゅっ。 『ああ、んめえなあ! こりゃあ、極上品だア!』 いつしか岩の人々も手をつなぎ、一本の綱のように連なってその人を介助した。 全員、一丸となってその岩に手をつないですがりつき、だれ一人として、地獄から亡 者はいなくなった。