「位が上がると羽ばたかなくても飛べるようになるのダ。えっへん」
と言いつつ彼の肩口にとりついて離れない。
ここへ来るまでにどうも消耗したようなのだ。
荒い息をついて、胸を抱えて、苦しそうだ。本人は隠しているつもりらしい。
『次の道は、きついぞ。炎熱地獄だ』
二人は同時に互いを見た。
せっかく血の池地獄から逃れたというのに!
亡者達はもう先へ進んでしまった。
お互いが取り残された存在であると、はっきりと自覚した。
飛ぶように走って緑色の回廊を巡った。
そこは古めかしい宝飾品の数々を凝らして、観るものを魅了した。
いくつかガラス戸が割られ、ぽっかりと穴が開いている箇所があった。
明らかにコレクションを損なう行為が成されたのだと思われた。



