「あのな、地獄で嘘はつかない方が良いぞ」
瞬間、アレキサンドラは両手で口を覆った。
「それに、冥府降りの計画を練るために、図書館にこもっていた時、言っていたじゃないか。野猿のようだった。喧嘩なら買うって」
「喧嘩なんて買いませんよ。それは王子の聴き違えです」
アレキサンドラの顔に朱が走った。
よ、と言って、梯子に手をかけ、王子は一言、
「まあ、そんな屈託のなさそうな君に憧れ、どうしてか惹かれていたのだが……乙女とあらば至極当然。私は男好きだったわけではなかったのだ。善かった!」
そうしてするする上の方まで昇ってしまうと、
「おーい、どうした。テンポ良くいけよー、先は長いからなー」
てっぺんの先まで彼が昇りきってしまうまで、アレキサンドラの呼吸は安定しなかった。



