「あれは男友達ですよ。年上だけど幼い頃からかまってくれて。ボク、腰巾着みたいでしたね。でも、生まれて初めて」
「親友、だったのだろう?」
「彼は、そう、呼んでくれました」
彼女は年頃の娘らしくはなく、こくり、とおとなしく頷いた。
「そうか、ならば言うが、私は家出が得意でね」
「なにを今更。皆、存じ上げておりますよ。どこの女性の元に上がり込んでいるかとか」
「うん、まあ。そういうわけでな」
「どーゆーわけです」
「まあ聞け。たぶんそちらは知らなかったのだろう。何とも元気に走り回っている可愛い子供がいるなと……」
「その子供とは? なにかありましたので?」
「あるわけない。男だと思っていたからな。実は忍んで城下の街へは行ったことがあるんだ。そう多くはないけれどね」
(嘘つき)
アレキサンドラは胸の中で笑っていた。いつも、観てたくせに。



