「悔し涙に暮れていた女性は高音域の美しい声で魔物達を夢中にし、興奮させて、ついには優しい子守歌で眠らせてしまったんだ。そんな事ってあると思うかい? あったのだよ!」
王子は夢中で話し、アレキサンドラの返事を待たずに、次々と語る。気がせいているようだ。ここを通り過ぎれば、次の地獄が待っている。どうあってもここでアレキサンドラの正気を取り戻さねば。
「だからなあ、君のそれも、その子もしようとすれば何かできるんじゃないか?」
「そんな、わたくしには、とてもそうは思えません」
「できるじゃないか、愛される、と言うことが」
ほぎゃああー!



