それともそれすら欺瞞(ぎまん)なのか。


「できない」


 はっきりと、王子は言った。


「君は本当にその相手を愛しているのだね……?」


 女性は不思議そうに首を傾げた。


「唄をうたってはくれないの」


「そして、その相手に、私の魂を捧げるつもりだね?」


「なっ、なぜそのようなことをわたくしが!」


 女性がのけぞるのと同時に、何かを引きずるような音がしていた。