「あれは罠です、王子」 「わかって、いる」 「霧の中から、だれかが……」 真っ白なドレスを着た背の高い女性が何かを差し出している。 「あなたの唄を聞かせて……愛しい人」 それは黄金のライラだった。音がする。 「おまえはだれだ」 「おまえではないわ、わたくしはあなたの守りびと。ずっとあなたの歌声を聞いていた……さあ、唄っておくれ」 その顔は悲しげで、涙にくもって瞳の色が見えない。