たとえば、自分だってこの木に昇ったからと言って悪でも何でもない。
餌を集めねば冬を越せないリスたちを驚かせてしまうかも知れないが。そんなことは望んでないし、本意ではない。
だから、大木には昇らない。
別にうろの中に熊の子がいたとしたって、それを邪魔する気にはならない。
天上天下、あるがままに。
サフィール王は最近覚えた子蛇の好物を、身にまとっていたバッグから取り出し、小ちゃい手のひらに両手を添えてやりながら、子蛇に与えてやるようにうながす。
普段、装飾品のように幼児の腕に巻き付いているくせに、餌だと思うと、するするほどけて餌を喰う。それでいて、自分こそが彼の守護であるとの自負を抱いているらしいのが目に見えていておかしい。
ともあれ、もうすぐ、山に雪つもるほどの、冬が来る。
終わり



