そして遊び疲れた母子に、満足げな微笑みを残して、救急ボックスを置いた。
いくら国唯一の山の上といえども、まだまだ危険がいっぱいだ。子供が「あ」などといえば見返って包帯を取り出してしまうサフィール王だった。
いつしかアレキサンドラは言った。幼い頃の小さくて夢中になった冒険や、山遊びのことを。
花咲く春、木イチゴや桑のみのおいしい初夏、そして栗やどんぐりの拾える秋、山歩きしてると、さまざまな小動物が見られ、人の気配に気が付くや素早い動作で木の上の方まで逃げてしまう。
そんな様子を見かけるにつけ、自分も世界のほんの一部に過ぎない、この世の全てに生かされているのだと感じる。



