『兄貴にずっと言えなかったことがある』


『まるで死ににゆくようなことを言うな』


『相変わらずキツイな。言葉ひとつ、許してはくれないのか』


 情けない、そう言いつつ涙の頬に笑みを浮かべて、


『まあ、生きていてくれさえすれば、いいさ……』


『俺はまだある。生きて、兄弟げんかをまたしよう』


『なんと……うれしい、小憎らしいことを』


 と、大蛇(おろち)の目に涙が浮かんだ。

 弟は兄を泣かせる技を習得した。
 何がなんでも良い兄弟だ。