「なあ」 「なんだ。こちらは軽々しく話しかけて欲しくはないのだがな」 「あの女、名前、なんてんだ」 マグヌムが王子に、珍しくしおらしい態度で接してきたと思うと、これだ。 「なんだかやたら色気のあるほうか? それとも俺のフィアンセか」 「フィアンセ?」 彼はクリスチーネと男性服のアレキサンドラをしげしげと見て、合点がいった様子。 「そっちのほうだ」 王子はとっくに見越していて、迷惑そうに言った。 「口をききたくないんだろう? さっき、そう言ってたじゃないか」