「その鞄に、前は何かついていたよね」

「これに……?」

 莢は肩から斜めにかけるタイプの黒い鞄を自分の目の位置まで持ってきて、内側と外側をまじまじと見る。
 そういえば、確かに何か物足りないような気がする。何だっただろう。すごく大切なものだったような気もする。

「それから、今日は平日で、時刻は午前です」

「……?」

「莢、君は確か高校生だったと思うんだけどな」

 始めはわからなさそうに首をかしげていた莢だったが、純の言葉に軽い衝撃を受け、目を見開く。

「私……っ、がっこ……っ」

「うん。学校。莢は昨日もこの時間に来ていたよね」

「昨日は放課後だっ……」

「ううん。……今と、同じ時間だった」

「……っ」