僕は、ただ見ていることしかできなかった。


 僕の大好きな莢が、この世で一番の悲しみを大人たちから強制的にプレゼントされる瞬間でさえも。

「でも、莢ちゃんが生きる希望を失わなかったら、もっと生きられるからね。生きる気持ちが大切だよ。精一杯、私達と頑張ろう」

 白い服を着たこの人たちは優しそうな顔をして、なんてことを言うんだろう。
 莢が僕を包み込んだ両手に力を込めたのが感じられた。莢は俯いている為、僕からはっきりと表情が見える。きつく、唇を引き結んでいる。