少しクラッとしたタイミングで、後ろからカランとドアが開く音がした。
身体が少しこわばったことに気づくと同時に懐かしい声。


「こんばんはー」


その声は私ではなくマスターに向けられているとは分かっていたけど、ほとんど反射で振り返ってしまった。


「あ…久しぶり」


少し焼けた肌。私と大して変わらない背の高さ。女の子みたいに大きな瞳。最後に見たときとほとんど変わっていない彼の姿に胸の奥が熱くなった。
変化といえば髪が少し伸びたのと、すこし痩せたくらい。


「久しぶり…急に無理やり作ったような理由で呼び出されてびっくりしたんですけど」


開口一番出てきたのは、いかにも私らしい可愛くないセリフだった。
付き合っていた当時もこんな調子で、素直に喜んだりできない自分が嫌になることがよくあったことを思い出した。