こんなことを言われたら彼を困らせるかとも思ったけど、これっきりなら問題ないだろう。


「なんだ…恵司も同じだったんだ。
私もあのときは焦ってたよ、会社の話してる恵司に嫉妬してたりもしたし。
私だけじゃないってことが、今更でもわかってよかった。いってくれてありがとね」


それを聞いて今度は彼が驚いた顔をして、その数秒後に困ったように微笑んだ。


「お礼を言われることなんてしてないよ」


そう彼が呟くと、少し居心地の悪い沈黙。

2人の間を埋めるのはひっそりと流れるジャズ。

but not for meか…私のものじゃない。

目の前にいる彼も私も、お互いのことを好きなままだったのに…今はもう自分のものじゃない。

このシーンにぴったりで笑ってしまう。