ナガレボシ



授業も終わりかけた頃、
その時になってやっと、
あたしは教室の様子が
いつもと違うことに
気付いた。


ん???


んん???


あんな子いたっけ??


あたしの前の列の
一番右端に、見たことのない男の子が座っていた。


「ねぇねぇ亜紀枝。」


亜紀枝は最初聞こえない
ふりをしていた。


「亜紀枝ッて!!!」


「何よッ!?!?!?」


「あんな子いたっけ??」


あたしはその男の子を
軽く指差して言った。


「あぁ。なぁんか昨日から新しく入ったらしいよ。
授業は今日が初めてみたいだけど。」


亜紀枝はさらに小さな声
で言った。


「結構かっこいいんだって。あたしまだちゃんと見てないの。顔。」


「名前なんて言うの??」


「沢本 亮」


「サワモト リョウ??・・・ふ~ん。」


「あんた狙いなよぉ。
バスケ少年だってさ。
頭もすごい良いみたい。」


亜紀枝が少し悪だくんだ顔つきであたしをはやしたてた。


「ばかッ」




でも何か不思議。

初めて見たのに、
後ろ姿だけなのに、
前から知ってるような雰囲気がある。

沢本 亮・・・・

いや、知らない。


何だかその時からあたしは、やけに沢本くんのことが気になって、ついつい目がいってしまった。


沢本くんは、
ずっと何かを考えてるみたいだった。


どんな顔なんだろ。


その時、沢本くんがこっちを見た。


ドキッ!!!!!


びっくりしたぁ・・・

やばい・・・
見てるのバレちゃった。


けど、沢本くんは
亜紀枝が言うように
確かにかっこよかった。


まさにバスケ少年といったような、今時の男の子といったような・・・
だけどどこかにあどけなさがあるような・・・

一目見ただけだけど、
すごく頭に焼きついた。


何これ。
一目惚れ???


違うよね。


違う違う。



あたしは自分に
いいきかせて残りの
授業に集中した。