~天に背いて~<~天に送る風~第二部>



「その名残か。いや、彼らの姿を見る限り、彼らの中で戦いはまだ、終わってはいないようすだ」


 そこいらにたたずむ影が今も戦争の痛手を訴えている。

 焼け付いた肌とちぎれたしっぽ。

 傷ついていないものなど影も形もないではないか! 

 加えてあたりは夜闇に支配されている。空には楕円の真紅の月が浮かんでいた。


「ウロボロスはここの番人だったのですね」


 もはや生き物としてすら認識し難いかれらのことを、魂の異端児でもあるアレキサンドラがつぶやく。

 かれらも傷つき、苦しんでいた。

 その事実が彼女の中のなにかを動かした。


「ウロボロスは彼らを癒し、守るために泉に潜んでいたのか、それはわからない」
 

 多分、人間的に見ればそうなるのかもしれないが、ここは地獄。一般論は通じない!