すんでしまってから王子は、深呼吸をした。
拒まれはしないかとおそるおそる、指先で彼女の指先に触れる。
「リック、愛している」
もう自分の命はここで果ててもいいのだと思い、口にしたのだ。
「わたくしもです、王子」
リッキーは緊張に青ざめながら言った。
二人は山奥の木々のざわめきとは別に、潮騒の音を同時に聞いた。
血の気が下がる音だ。
そうだ、冥府へと向かうということは、生きた身体を離れ死ぬ、と言うことに他ならない。
口づけよう、二人の結びつきのために。
マグヌスの愛する者を取り戻すために。
本来ならばマグヌムを心から愛する宰相マグヌスの赴くべきことだったかもしれない。だが、その命を奪ったのは自分たちなのだ。



