リックは私でなくとも良いのだ。

 いや、他に恋を語る相手がいるのかもしれない。

 だれだそいつは。

 何者なんだいったい。

 だが、この誓約書がある限り、彼女は自分からは離れられない。

 そのような感情はアレキサンドラには思ってもみなかったことだった。と、いうより。 
 完全にはき違え、恋になる前に、勝ち取った彼女の彼への信頼は大きかった。


(私から望んだ恋だ。相手にされずとも、辛抱強くアプローチをかけて、周囲の男どもを排除すれば叶うかもしれない)


 王子はこと恋に対しては根性があると言えた。

 当たり前である。

 一国の王子が、しかも王位継承者第一位の彼が、乙女にフラれた程度ではやっていられない。覚悟が必要だ。

 アレキサンドラも誓約書にサインした時点でわかってなければならなかったのだ。しかし未だに無自覚と思われる。