「ああ、君をいつか独りにしてしまうのではないかと気にしていた。実は冥府の門のありかは君の母君が知っているそうだ。きっと目が覚めたら協力してくれる」
「泉の水を試すのはどうでしょうか」
アレキサンドラは不意に思いついて、その可能性にとりすがった。
果たして。彼女の母親は無事目が覚めた。
当たり前だが仮死状態にあった間のことはまるで覚えていない。
それどころかアレキサンドラを邪眼ののろいから救ったことまで忘れて、
「ああ、王子。あなたは次の満月にオオカミに変じるでしょう。そのとき一番近くにいた者を犠牲にせずにはいられないでしょう」



