「なぜです」


「なぜ、と問うのか? あんな目にあったのだ、彼なら腐っているかもしれないだろう」


 思いもしない返答に、アレキサンドラの心は大きく揺らぎ、思わずくすっと笑ってしまった。


「もしかしたら、冥府の王になるべく、勇ましく君臨しているかもしれません」


「そちらの方が良いのか、君にとって彼は」


 王子はにやり、として言った。


「どちらにしろ、意気消沈している姿は、見たくありません。あの宰相殿の弟君ですから」


「嫌味(イヤミ)のキレは兄弟そろって良いんだがな」


「よっぽどきついことを言われてるんですね」