~天に背いて~<~天に送る風~第二部>



「そうですか。ボ、わたくしは不肖ながら、心が壊れるかと思うほどすさみましたよ」


「意外とかわいいところもあるな」


 王子はリッキーの話を真剣に聴き、視線を合わせたが、そこになにも浮かんでいないのを確かめて、今は大丈夫なのだろうかと思って謝罪の言葉を口にした。


「いやすまん。そこまでは知らなかった」


 するとリッキーは眼を細めて穏やかに言った。


「お互い様です。わたくしも、いえ、だれもあなたと同じではない」


 そのやりとりの後だった。

 一国の王子が姿を消した、との知らせが城内を駆け巡った。

 宮中で育ったのだ。

 外に知り合いがあるはずもない。近くの宿屋に潜伏でもしているのか、では原因は何だ。