「そうですか。ボ、わたくしは不肖ながら、心が壊れるかと思うほどすさみましたよ」
「意外とかわいいところもあるな」
王子はリッキーの話を真剣に聴き、視線を合わせたが、そこになにも浮かんでいないのを確かめて、今は大丈夫なのだろうかと思って謝罪の言葉を口にした。
「いやすまん。そこまでは知らなかった」
するとリッキーは眼を細めて穏やかに言った。
「お互い様です。わたくしも、いえ、だれもあなたと同じではない」
そのやりとりの後だった。
一国の王子が姿を消した、との知らせが城内を駆け巡った。
宮中で育ったのだ。
外に知り合いがあるはずもない。近くの宿屋に潜伏でもしているのか、では原因は何だ。



