幻だったんだ。
大丈夫なフリをしていたんだのりおの奴は。
そして傷を負ったまま、寂しい現実へと帰って行ったんだ。
彼の父親も、彼の母親も、兄貴まで、みんなのりおのことは捨て置き、好きなように暮らすようになるだなんて口が裂けても言えない。
言えないよ!
でもそれじゃあ、ボクは嘘をついたことになる。
のりおの嘘は、ボクが彼についた嘘だ。きっと、それが真実になると、希望を与えたくて……
与えるなんておこがましい。
のりお、おまえは知ってた。
両親のダブル不倫がどうのと言ってる場合じゃない、おまえの家は崩壊していたんじゃないか!
あきらめてここへ来たのか?
気休めの言葉を聞きたくてここへ来たのか?
違うだろう!
ひとこと、言えばよかったんだ。
助けてくれと!



