彼が何をするのか、見ていなければならなかった。
「あなたを……次期当主とせよと、心から願っております。わたくしの言葉は全て、あきらさんの遺言と考えて下さい、では……」
そのときあっけなく去っていった彼を、ボクはなんて冷淡な人だろうと思っていた。
けれど違った。
今にも死にそうなひとの心にアクセスして共感してその言葉を伝えて。
きれい事じゃない、苦しみを伴うものだったんだ。
……えいちゃん、ごめん。
あのとき、母がボクのために父を当主にと、ボクを守るためにそう、思ってくれていたんだ。
願ってくれていた!
わかってたんだ、えいちゃんは。
ボクを私生児にしないために。
母はボクに父をくれた。
『力』なんかよりもずっと遠い約束……母が選んだひとが当主。



