そうなんだ、ボクは小さい頃から弟か妹が欲しかったんだけど、母が病気してから、それは無理なんだと父さんから聞いた。
具体的にどんな病気か、ボクは知らなかった。
まさか、命に関わる病だったなんて……!
病院の手術室の前で父と一緒に肩寄せ合って、チョコを買ってとねだった。
いいよ、買っておいでと百円玉を握らせてくれた父は、ほとんど紙っぺらみたいな存在感で、ため息みたいに頼りなく、呼吸を繰り返していた。
チョコは堅くって、ミルクチョコレートなのにミルクの味どころか、ぼそぼそと表面に白い脂肪がこびりついていておいしくなかった。
ボクは早く面倒ごとを片付けたくて、板チョコをえいっとばかりに口に押し込んだ。
「ふぉふぉーふぁん、ふぉふぉーふぁん」



