君を抱きしめるから~光、たずさえて~





 ちょっと旦那さん、ステロタイプだな。


 奥さんは悲劇のヒロインみたいだ。


 全くかみ合ってない。



「いつも、こんな調子だよ」



 ちょっと大人じみた声がした。


『渡り』の『力』は使っていないのに、いつのまにかボクはのりおの夢に入り込んでしまったらしい。


 そう、のりお! 



「何で言わなかった? 家の中がこんなだって」



「べつに」



 周りを四方形に囲まれた白い壁の四畳半。


 その片隅に、のりおはうずくまっていた。


 閑散とした空間にのりおの勉強机がある。


 どうやったか知らないが小刀が刺さっている。


 机の上には数枚の紙があって、それは題名以外真っ白だった。