近衛の持ってきた天幕の中は、見た目の割に広かった。セントは、目の前で眠る、この国の王女を眺めている。別に、下心がある訳ではない。ただ、あんなに色々な事があったのに良く寝ていられる……と思っているのである。傍らには、いつでも抜けるようになっている愛刀がある。

 天幕の中に近衛の姿はない。森へ食料や薬草を探しに行った。実りの季節、知識さえあれば、森は生きるのに不自由しない場所だ。かといって、セントに知識がないのではなく、いざというときセントのほうが確実に姫を守れるだろう、という近衛の考えからのことだった。