ボクがキミをスキな理由【短編集】

『そっと歌って?でもはっきりと
優しい言葉で囁いて。
嘆きの歌ではなく、愛の祈りを

一度潰れた愛の輝きが戻るまで。』



甘く囁くようなアンナの声が
俺の胸をえぐるように
鋭く鈍い痛みを放つ。



――こんなん……、ピエロやないか。



さっきまでは俺のために歌ってくれる、アンナの姿があんなにも眩しかったのに、今はこんな歌詞を歌うアンナの姿が憎らしい。


俺じゃなく
アイツのために
アイツのことを思って歌ってるんか?




そう思うと、やるせなかった。





『ウィスパーノットはね?
ケンカ別れした恋人たちの曲なのよ?』




あの狭いアパートで、ベッドにねころんだまんま俺の髪に指を絡ませて微笑むアンナの姿を思い出す。



『え?どういうこと?』


『ケンカしたけれどやっぱり好きで……
仲直りをしましょう。
過去のことは水に流して、今の愛を大切にしましょう……っていう歌詞がウィスパーノットなの。』



『へぇ、なんか昼ドラみたいやな。』




呆れたように俺が笑うと




『そうね。だけど素敵だと思わない?』


『なにが?』


『遠くに離れても、どんなに酷いケンカをしても、それでも愛を囁いて欲しいって……、最高にドラマチック。
そんな風に愛されたら、素敵でしょうね。』