『私も…ね?
ある人にこの曲を教えてもらって…それでジャズの魅力の虜になったの。』
そう言って
アンナは懐かしそうに目を細めた。
――誰に?
そう聴きたかったけれど、聞けなかった。
その時のアンナの切なそうな
今にも泣き出しそうな顔を見ていると
何も言えなくなってしまったから。
誰かはわからない、アンナの“ある人”
でも、その人はきっと今のアンナを形成した大切な人に違いはなくて…
俺の知らないアンナをその人は知っているのか、俺の知らない時間を過ごしたのかと思うと、嫉妬でココロが焦げそうだった。
言いようのない気持ちを抱えて、
その気持ちを振り切るように、アンナのカラダをギュッと強く抱きしめると
『痛いよ、レオ』
そう言ってアンナが微笑む。
行かないで、アンナ
どこにも行かないで、アンナ
俺、早く大人になるから
早く大人になって、君にふさわしい男になってみせるから、待ってて。
そんな願いを込めながら
俺はカノジョの小さなカラダをギュッとギュッと抱きしめた――……



