にこやかに20代前半とは思えないほどのオーラを放ちながらSimbaはマイクに手をかける。
「今日はしっとりとしたナンバーを中心に歌っていきたいとおもいます。
まずは…ウィスパー・ノット。」
そう言って
曲紹介をした後、アンナはピアニストに目配せをして演奏を始めさせる。
Whisper not
“囁かないで”という意味を持つこの曲は、俺が始めて好きになったジャズのスタンダードナンバーやった。
ミディアムテンポの中に表れる、心地いいブレイク
『わっ…この曲カッコええなぁ!』
アンナのアパートでハダカでじゃれあいながら、カノジョにそう伝えると
『レオ、意外と渋い趣味だね。』
そう言って彼女は嬉しそうに微笑む。
『実は私もこの曲大好きなの。』
『そうなん??』
『うん、このマイナーコードの渋さがたまらなく好きなんだ。』
『マイナーコード??』
『あぁ、ゴメン、専門用語だったね。
マイナーコードって言うのは…ちょっと淋しい切ない感じのする和音のことよ??
私…明るい曲も好きだけど、本当はこういう渋い曲がすきなの。』
カノジョはそう言って
近くにあったLPを俺に手渡す。



