「近江さ……」


ぱしっと差し伸べた手を払いのけてしまった。お尻をパンパンと叩きながら立ち上がる。
少し不貞腐れながらそっぽを向く。


「……言っておくけど、私の中に『謝る』っていう行為はないから」


と、ツンデレ発言。


「せいぜい可愛がってもらえば、ペットさん」

正直嫌味にしか聞こえない。
もう、完全なペットだ。私は肩を撫で下ろす。


「あのね、私は生徒会役員として精一杯頑張ろうと思うんだ。今日なんてデータ抹消しちゃうなんて大失敗しちゃったし、分からないことだらけだけど最後までやり遂げようって……」


「データ抹消した? バッカじゃないの!? それでも生徒会にいようとするなんて図々しいにもほどがあるわ」


副会長が前に出て、物言いをしようとしたが、会長が横を振った。


「そうだよね、図々しいよね。私は地味子からこんな綺麗な格好しても中身も綺麗にしないと始まらない。ちゃんと、みんなに認めてもらえるようにするから、だから……」


「だから、何よ?」


一番言いたかったこと。言い訳や理屈を並べない素直な気持ち。
口籠りながらも、真っすぐ彼女を見据えた。


「こんな私だけど、お昼一緒に食べてくれる……?」


近江さんは私に背中を見せる。そのまま歩き出してしまう。
やっぱり、そう簡単に許してくれない。
落胆する中、突如彼女の足が止まる。

肩越しで、表情は窺えない。


「……だったら今度は、アンタがメロンパン奢りなさいよね」


そう言って、夕陽の光に向かって歩き出す。
放心状態になりかけたけど、ゴクッと生唾を飲む。


「うん、次は私が奢るよ!」


声を張り上げて宣言すると、近江さんは私の顔を見ずに一気に駆け出した。
その際、煌めく雫が見えたのは気のせいだろうか。


肩をポンッと掴まれて我に返る。
首を旋回させると、会長の不敵な笑顔が広がっていた。


「……どうやら、解決したようだな」