「はぁはぁはぁ……」


こんなに走ったのは久しぶりだ。日頃の運動不足で息切れがすごい。


「び、びっくりしたぁ」


いきなり上から落ちてくるんだもん、心臓止まるかと思った。
それどころか、動悸が治まらない。

突然現れたのはかなりのイケメン。芸能人かモデルみたいな。私服着てたからたぶん違う学校の人。

まるで異次元から飛び出してきた異国の王子みたいだった。


っていうか、あの御神木で何してたんだろう? 罰当たんないのかな。


「そうだ、今何時だ?」


結構道草食っちゃったからそろそう入学式が始まる時間のはず。


「って、あれ?」


ポケット、カバンの中を探るが、携帯電話が見当たらない。腕時計は苦手なのでしていないから携帯が時計代わりなのに。


(ひょっとして、尻もちついた時に……)


顔がサーッと青ざめる。今戻ってあの人がいたら嫌だ。いくらイケメンでも睨んでる感じだったし。でも、どうしよう。折角入学祝に買ってもらったのに。


チャイムが耳朶に触れて肩が震える。やばい、きっと入学式の合図だ。仕方がなく、今は学校に行くことに決める。入学早々、遅刻はしたくない。


『入学生の皆さんは第一講堂までお集まりください』


アナウンスが入るものの、ジャンボ学校故に広すぎる。校内地図を見ても現在位置すら分からない。


「もう、何でこんなに広いのよっ」


文句を垂らしつつも校内を彷徨う。やっと第一講堂を見つけた時には式が始まるギリギリの時間だった。

私のクラスはC組。雰囲気からすると、悪い人はいない感じがするのだが。できるだけ目立たないよう、肩を縮めて座る。最後に到着したので恥を掻いたみたいな気分だ。

きっと、高校生になっても地味子だ。


それが私の日常。小学校でも、中学校でもそうだった。目立ったりしたらイケナイ。そんなことをしたら、周りから顰蹙を買うのがオチだ。


『これより、本年度入学式を始めたいと思います』


教頭らしき人が言う。多分これから校長の長い話とか始まるから適当に聞き流すことにする。

長ったらしい学園長の話が始まるんだろうなと、あくびをしようとしたその時。


突然、講堂の扉が勢いよく開いた。私は大きく口を開いたまま、反射的に後ろを振り返る。


「はいはーい、皆様ちゅーもーく!!」