「わ――――――――っ!!?」


ちゅん、ちゅん、ぴちちち……。


小鳥のさえずりが聞こえる。大絶叫しながら、私は汗だくで飛び起きる。
辺りを見回すと、ここは住み慣れた自分の部屋だということが分かった。


「はぁはぁ……。何だ、夢か……」


息切れしながら胸に手を当てると、異常なくらいに心臓がバクンバクン轟音を立てている。
今見たものは総て夢だったと安心したのも束の間、すぐに昨日の記憶がフラッシュバックして襲いかかる。

この世とは思えないくらいの端正な顔つきが私に近づく。


震える指で下唇に触れる。まだ熱い。温もりが残っているのが肌で感じる。


夢なんかじゃない……。私は会長とキ、キ、キ……。


その名称も上手く口に出せない。身体中が炎に包まれたみたいに熱い。このままだと大火傷だ。


瞼を閉じれば、あの時の記憶が蘇る。その時の私は硬直し、思考は完全に停止していた。


っていうか、まさかあんな形で口唇を奪われるなんて。意地悪でサディストだなって思ってたけど、まさかここまでとは……。


(あれは私のファーストだったのに~)


生まれて初めてがあの男。よくレモンの味って言うけど、直前にフルーツ茶を飲んでいたためか、甘い味がした。

そんなことはどうでもいい。何であんな奴に唇を奪われなければならないのか。


「今日からお前は俺の奴隷だ」


忘れてた!! 私、あの会長から奴隷宣言されちゃったんだ。おまけに生徒会庶務なんて役職まで就くことになっちゃって。


えーん、私は地味で且つ普通の高校生活をしたかったのに、何でこんな目に遭わなきゃなんないの――――――。



私の入学先の高校はめちゃくちゃヘンテコリンな学校だった。


『生徒会優遇制度』なんて他の学校には絶対あり得ない権限があって、生徒会という組織が学校の最高権力者として君臨していたのだ。