咄嗟の判断で手を出したので、ナイスキャッチができた。


私の携帯だ。どこも割れていないし、傷も付けられた痕もいない。念のため電源を入れると、データも抹消されていなかった。


「返す。っていうか、旧一世代携帯なんていらないし」


旧一世代は余計だ。金銭に余裕がなかったので、最新機種は断念した。


「……さっきの続きですけど」


「はぁ?」


「私を生徒会庶務に任命するって話です!」


「お前さ、何も分かってねぇな。この俺がお前のためにフォローやったんだぞ? まずは俺に頭を下げろ。舞台で卒倒したら、ここ通えなくなってたぞ」


「それは……そのことについては、ありがとうございます」


本当は言いたくなかったけど、ここは割り切る。だけど、会長は不機嫌そうに眉根を歪めた。

「お礼を言えばいいって問題じゃない。責任ぐらいは取ってもらわないとな」


「責任って……もしかして、それで私を生徒会に!?」


会長はフッと鼻で嗤った。右腕を扉に付ける。俗に言う、壁ドンってやつか? 私の足は瞬間接着剤みたいに動けなくなっていた。

イケメンに壁ドンされたらキュン死してしまうかもしれないが、ここでは本当の意味で死んでしまいそうだ。カタカタと震えが止まらない。


もしかして呪いか? 金縛りか!?


「これからは地味子として生きられねぇぜ」


「は……?」


何を言ってるんだ、この人は。私が地味子なのは分かってるけど。
含みを帯びた笑みからは恐怖しか感じられない。