正真正銘のコンビニ強盗だった。


「キャー、誰かー!!」


椚先輩目当てだった女の子達はどさくさに紛れて店の外に逃げ出してしまった。私も逃げようとしたけど、先輩のほうのレジにいなかったせいで、入り口を強盗に塞がれてしまった。
店の中にいるのは私と先輩と一人の店員と強盗となった。


「ひいいいいいいい!!」


しかも、私の方のレジ店員は恐ろしさの余り腰を抜かしていた。


「大人しくしな、兄ちゃん。さっさとレジから金を出しな」


標的は椚先輩。この強盗は椚先輩並みの長身だった。なので、やたらでかい先輩にはひるまない。
巨人VS巨人
でも、椚先輩は顔色一つ変えない。いつもと同じ、平然を気取っていた。


「おい、早くしろ!!早くしないと刺すぞ」


動こうとしない先輩に対し、強盗は苛立つ。


(先輩何やってんのさ・・・・。お金出して、警察に何とかしてもらうしか・・・)


私はとにかく、この恐ろしい現場から解放されたかった。だから他力本願な考えが浮かんでしまう。
そして、先輩の開口一番が出る。


「・・・刺したきゃ刺せば?」


何てこと言い出すんだ、コイツは―――――!!私を殺してくださいと言ってるようなもんじゃないか。


「んだと、この野郎・・・・!!」


ナイフが先輩に向かって飛んでいく。私は見ていられなくて、両手で顔を覆う。


し――――――ん・・・・


「・・・・・・?」


何故か静かになった。何が起きたのか、と恐る恐る手を下げる。


「ぎゃああああっ」


強盗が悲鳴を上げた。見ると、先輩が強盗の手首をひねっていた。強盗の手からナイフがこぼれ落ちる。すかさず、そのナイフを拾い上げる。


「・・・形勢逆転だな」


今度は先輩が強盗にナイフの刃を向けた。
くっ、と悔しい声を上げた途端、強盗は私に睨みつけた。


足が硬直して、動けなかった。