未だこの浮遊感に慣れずにいたが、意を決して会長が指差す方向に目を向けた。


息を呑んだ。ずっと遠くのほうを見ていたから気付かなかった。灯台下暗しってやつ?


視線の先は通っている天帝学園高等部の校舎。上から見るのはもちろん初めて。
一般コースも進学コースも、生徒会棟もイルミネーションで包まれていた。あの時は暗くて設置していることすら分からなかったけど、一つ一つが宝石みたいにキラキラ輝きを放っていた。


ルビー、トパーズ、アクアマリン、エメラルド・・・・様々な色に変化する。


「メンバーに協力してもらって、イルミネーションを業者に頼んだんだ。最新LEDとはいえ、電飾代と光熱費結構来たぜ~」


腿のところで親指と人差し指で丸を作った。


「払えって言うんですか?で、でもどうしてこんなこと・・・・?」


その時、イルミネーションがルビーの光の集まりとなり、東京塔を作りだした。


「ま、まさかこのために?」


「・・・約束しただろうが、見に行こうって。せっかくだから、本家に負けないとびっきりなもん見せてやろうと思ってさ。ところでお前、『臥薪嘗胆』の意味は分かったか?」


私が眉を八の字にしたのを見て、会長は「テキストに出しただろうが」と怒鳴りつけた。
急いで捜すと、一番最後の問題になっていた。文章に気を取られすぎていた。


「も、目的のために苦労し努力すること?」


「正解。お前は生徒会が嫌いか?」


「嫌い・・・じゃないですけど」


「ならいいじゃねぇか。昔は忘れて、目的に向かって努力しろ。未来のことだけ考えろ」


私は過去ばかりにこだわっていた。そればかりに囚われ過ぎていた。
自分で抜け出そうとする努力をしていなかった。
このままだと、未来は暗いままだったかもしれない。


「そうですね、ありがとうございます」


「だがしかし、もとはと言えばお前の自分勝手な行動が原因だ。反省しろ、そして奴隷としてこれからも働け」


「・・・・はい」


「まず、手始めにここからパラシュートなしで飛び降りてもらおうか」


「ご主人様、私を殺す気ですか!?」