「それは本当?」 「本当よ。どうかした?」 目を見開いて問う桜鈴に、陽紗も少し驚いた。 いつも穏やかな母の今まで見たことのない反応を見たからであった。 「……何でもないわ。ありがとう」 笑顔でお礼を言う桜鈴。 いつもと変わりないようだった。 「ううん、それじゃあ、戻るね」 少し気にはなったが、陽紗は執務室へと戻っていった。 側近室に一人残された桜鈴はつぶやいた。 「やっと約束の時が来たのね」 嬉しさのあまり涙を流した。