疵痕(きずあと)



 いつの間にか奴の口調に変わっている。


「たかが機材の下敷きにされただけ。大したことないよ……たぶん」


 たしか奴は妹の涙がどうとかいって殺気を醸していたが。


 覚えはないんだよな。


 俺は生きてるだけで人を傷つけずにはおれないのか? 


 いや、俺はいくら思い出の底を探っても奴の妹などという人物は、出会ったためしもないくらいに思ってる。


 そこが奴が俺を許さない原因なのだろうか。