よ つ の は

まるで、蚊が鳴いているかのような 小さな声でボソボソと漏らしながら 少し怯えた様子でUKに近づいてくる…―

「違うよぉ… もうすぐ春休みだし、みんなお金が無いんだよね。 ほら…春休みは何かと色々お金がかかるでしょ?」

そう言って 少し顔を赤らめながら小指を立てて微笑む、いかにもボクちゃんモテますよって顔をした 典型的ショタコン系男子… コイツは、野原良治(ノハラリョウジ) ウチのバンドのベーシスト。女子には人気があるんだけど、真面目な性格ゆえに 一途に彼女の事を大切にしている青少年だ。

それに対して 不満そうに口を尖らせているUKを見かねたのか、それまで黙って事の流れを客観視しながら窓際の机でレポートを書いていた男が席を立つ。

「やれやれ… テスト前の この大事な時期に呑気にライブですか? 君たちも僕を見習って もう少し時間とゆうものを 有効に使ったらどうなんだい。」

こう言って 銀ブチ眼鏡の眉間あたりを、あえて中指で押し上げながら ニヤリと笑う ちょっと鼻につく男は、蘇我 昴(ソガスバル)。 頭脳明晰で進学コースを受けている優等生。 なのに何故かいつも この部室で 俺たちの輪の中に入ってくるインテリボーイだ。