よ つ の は

* 雅 side *


―… ポンッ
熊さんが おもむろに俺の肩をたたいた。

「お前、終わったな…」

― は?

「なっ… 何だよ急に」

「ありゃ いかにもお前の好きそうなタイプだわ」

― なっ! 何を言い出すかと思ったら…

「お… おい! 何言ってんだよ! 無い無い! 俺は誰かと付き合うとか興味ねぇし、俺は このギターが恋人なのっ。
ほ、ホラ だいたい名前に俺の嫌いな『月』って字が入ってる時点で あり得ないって。 やだなぁー 訳分かんねぇ事 言うなよ!」

「お前… 狼男だったのか」

「だからぁ… ったく、また訳の分からない事を…。 とにかく!何もねぇって!」

俺は 取り乱しながら 必死に否定した。

何やってんだ俺…。
これじゃあ余計 認めてるみたいじゃんかよ。
だけど熊さんは 知っていた…。 俺が好みの女の子を目の前にすると、クシャミが出る体質なのを…。


「ふーん… まぁ、お前の好きにすればいいさ。
ただし、本気になるなら それなりにお前自身の身辺整理をしてからにしなよ」

― ったく… 一体どこまでコイツは見抜いてんだか…。

でも… ずっと加速度を増し続けている俺の鼓動には、どれだけ否定しても嘘がつけなかった…。