裏庭で穴を掘りながらチコはひどく怯えていた。がむしゃらに穴を掘っていると、唐突に、この町にやってきた日のことが思い出された。それが彼を怯えさせた。あの、果てしなく暗く長いトンネルを、恐怖と不安と、必死に戦いながら、あの特別な場所を、半ばやけくそにはいつくばって着た日のことだからだ。あの、彼にとってだけ特別な、あのトンネルと、がむしゃらと言う言葉が結びつくのだろう。そうだ、がむしゃらに突き進めば、どこか見知らぬ土地にたどり着けると、周りを取り巻く押しつぶされるような事実から逃れられると信じていたトンネル。そして、そこでデロレスを殺した時も、ただがむしゃらだったのだ、二度と訪れないで有ろう機会を逃してはいけないと。いや、俺は直接デロレスに手を下してはいない。ただ、彼女のお気に入りの光る石ころをあのトンネルに放り込んで、彼女がきゃっきゃと笑いながら石ころを追って丸い闇の中に姿を消した後で、トンネルの入り口に大きな煉瓦の固まりをおいただけだ、確かに俺でもあそこまで運ぶのにだいぶ苦労したのだから、ようやっと這うことを覚えたばかりの赤ん坊には退かすことも乗り越えることもできなかっただろう。