ストロベリーフィールド

「彩ちゃん、元気だった?」
葉月は満面の笑みを浮かべた。
そして、勢いよく一人で喋り始めた。

髪が伸びたとか、最近見た映画の話、そんな些細なことから
翔や啓太の事、学校での和希の様子まで聞いてきた。

だけど、私が答える前に話は次々変わっていく。

まるで何かを紛らわすようで、いつもの葉月とは別人のようだった。

「葉月、どうしたの?」

横で呆れている和希の変わりに聞いた。

「どうもしないよ?」

そう答えて、いつもの笑顔で笑う葉月が、痛々しかった。




結局、大した話もできないまま、葉月と別れた。

帰り道で和希に聞いても、わからない、と言うだけで、何も分からなかった。



家に着く少し前、和希はこれから向かう翔の家に、私を誘った。

断る理由もなかったし、翔の家にも行ってみたかった。

「行くー!」

元気のない和希を笑わせようと、大きな声で言った。

「うるせーよ」

和希の見せる微笑みに、少し安心した。



「ここだよ」

そう言って、和希は古びたアパートを指差した。